道端の老人

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  「同情かと聞いとるんじゃ」と老人は声を凄めた。   「分かりません…ただあなたと話がしたかったので」   「あんたの目は他の奴等とは違うようじゃな。あんたはいくつじゃ?」   「私ですか?私は47歳ですが…」 「わしは55ぐらいかと思っとったわい。あんたも苦労しとるんじゃな」 「確かに歳のわりには老けてるかもしれませんね。あなたはお幾つですか?」 「わしは63ぐらいじゃよ。正確な歳など分かりゃせんわい」   63歳!?80歳ぐらいかと思ってた…   「いつも道端に座っておられますが、何をしてるんですか?」   我ながらよくこんな不躾な事を言ったもんだ。   「何をしてるか!?ふっ…見てるんじゃよ」 「見てる…」 「日本を見てるんじゃよ。そしてあんたも“わし”とゆう“日本”を見とる」 「なるほど…難しい事を仰るんですね」 「何にも難しくなどない。感覚の話じゃ」 この老人は何となく時を過ごしてるんではなく、何かしら感じてるんだよな。 そりゃ生きてるんだから当たり前だが、この老人からあまりにも生気を感じられなかったから…
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