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「家には帰られないんですか?」
「そんなもんはとうの昔に無くなった」
やはりこの老人はホームレスなのか。
でもホームレスは駅や公園にいるイメージがある。
「ご家族は?」
「何年も前に別れたわい。その際に家を追い出されたんじゃよ」
「じゃあ…」
「さっきから質問ばっかりじゃな。そんなにわしに興味があるのか?」
「あっ…失礼しました」
「ふん。あんたがわしにならない保障がどこにある?」
「は?」
「あんたも会社を辞めて、妻に離婚を突き付けられ、住む家が無くならない保障などどこにも無い」
確かにこの老人の言う通りだ。
今の世の中じゃ、いつクビになってもおかしくない。
熟年離婚をしても不思議ではない。
言い知れぬ恐怖感が体中を襲う。
「日本はホームレスに冷たい国じゃ。いや、冷たいどころか無関心と言うべきか。ここに座り続けてそれを実感したわい」
「なぜ…ここから離れないんですか?寒さを凌げる場所もあるでしょうに」
「そんなのわしの勝手じゃ。ここが気に入っとるから離れたくない。ただそれだけじゃ」
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