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今日はやけに風の強い日だ。
老人の頼りない薄っぺらな服がバタバタ音を立てて揺れる。
強い風のせいで老人の長い白髪に隠れていた耳がチラッと見えた。
耳が潰れている…
これは柔道やレスリングの選手の耳だ。
「柔道か何かをされてたんですか?実は私も学生時代は柔道をしていまして、それなりに強かったんですよ」
「なぜわしが柔道をしてたと?」
「耳が見えた時に…それで柔道をしてたのかと」
「あんたの耳のようにか?」
!!!
「まだ気付かんのか…」と言って老人はボサボサの前髪を掻き上げると、額には大きな傷跡があった。
見慣れた場所に見慣れた傷跡…
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