第九話 シアの昔話

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少し、昔の話をしよう。 シアディルフィア・ウィン・カルナバレル、それが私の名だ。自分でも長い名前だと思っているのだが、周囲の者は普通にそう呼んでいるのでそれで通した。 いや、この名前に困っていたのが二人いた。その内の一人が私の婚約者である高村彼方だ。思えば私を『シア』と呼んだのは彼方が最初だ。そもそもこの呼び方は彼方が最初に言い出したのだ。 最初はそんな扱いに驚き、仕返しに『彼方ちゃん』と呼んだ。その呼び方に彼方は複雑そうな顔をしていた。 そしてもう一人、それが私の双子の姉だった。 ミアフィール・ウィン・カルナバレル、それが彼女の名前だ。私と同じ顔をして、私と違って金の髪と瞳を持つ少女。彼女は彼方に『ミア』と呼ばれていた。当の本人は驚いていたが、すぐに笑った。どう見ても気に入っていた。 私と姉は逆の性格だった。少し意地っ張りな私と違って、姉はかなり素直な性格だった。いや、割と天然が入っていたかもしれない。 初めて彼方を見た時に、羽や尻尾が無い事にかなり驚いていたのだから。一応説明をしてみたが、多分よく分かってないだろう。あの満面の笑みは、絶対理解出来ないから誤魔化している顔だった。 理解出来たのは一つだけ、ミアが彼方の婚約者という事実だけだったようだ。
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