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話し込む僕達の横で、突然玄関の戸が開いた。そこに立っていた人物を見て、自分の失敗を悟る。
「彼方、遅い。」
ショートボブと切れ長の目、そしてその内面を見せない無表情、それが僕の姉だった。
普段は仕事で夜遅くまで帰らないはずだけど、どうかしたのだろうか?いや、こっちは凄く大変な事があったけど。
「シアディルフィアさん、で間違いないですね?」
「うむ、シアでいい。」
「ではシアさん、彼方、お入りください。」
姉さんはそれ以上何も言わずに家の中に入っていく。問答無用らしい。
(そもそも何で姉さんはシアさんを知ってるんだ?まさか家族の中で知らないのは僕だけ?)
何か微妙な疎外感。でも、多分姉さんから『彼方には悪魔の奥さんがいる』とか言われたら、多分指差してゲラゲラ笑うと思う。
多分その後に苦労するのは僕だろうけどね。
何しろ姉さんは基本的には非暴力主義だが、逆にそれが辛い。僕に何かされるとかなり拗ねる。それはもう徹底的に。暗い部屋に閉じ籠ってドナドナとか歌ってる。妙に通る、感情のこもった歌なので、聞いてるこっちが鬱になる。
あれならまだ殴る蹴るの暴行の方がまだマシだ。
とか何とか考えている内に、僕達は客間に通されていた。
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