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光の中を漂う。それが数分なのかそれとも数百年か、それすら感覚にない。
意識は曖昧で、僕の体はこの空間に溶けていくようだった。
『彼方ちゃんっ!!』
幼い少女の悲痛な泣き声、大切な何かを失う事に怯えた少女の必死な声が聞こえた。
なんとなく、これはシアの声だと理解出来た。そして朧気に見えるのは幼いシアの姿だった。
そして少し離れた場所で、凄い展開になっていた。倒れているのは小さな男の子、血塗れの姿で倒れている。
(見るな・・・)
その男の子は右腕を失っている上に胸元に大きな穴が開いているのを考えると、そんなに長くないだろう。
(認めるな・・・)
その顔は、紛れもなく・・・
(理解するな・・・)
僕だった。でも、僕自身にこんな記憶はない。これを忘れるほど僕は記憶力が弱くはない。
だとすれば意図的に忘れているのだろうか?
そしてその側に立っていたのは、紛れもない怪物だった。
金色の髪と金色の瞳、血に濡れたその両腕が、この状況の意味を理解させる。この怪物が何者かは理解出来ないけど・・・
(理解出来ない?)
出来ないはずがない。
僕はこの怪物を知っている。いや違う、それは違う。
怪物なんかじゃ、ない。
怪物の雄叫びは、何故か泣いているようだった。
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