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「彼方様っ!!」
突然、声をかけられた。気付けば僕は物置部屋に立っていた。
「文月・・・?」
「彼方様、大丈夫ですかっ!?」
いつの間に部屋に入って来たのだろうか、文月はいつもと違って何処か焦っていた。
いや、待て。僕はいつこの部屋に入って、そしてここで何をしていたんだ?そもそも部屋に入った後の記憶が曖昧だ。
「彼方様、お体は大丈夫なのですかっ!?」
「えっ、えっと、うん、特に何もないけど?」
「そうですか・・・っ、いえ、彼方様、その目はどうしたのですかっ!?」
「目?」
そばにあった手鏡で目を確認してみると、絶句してしまった。僕の目は金色に染まっていたのだ。
いや、何だこの違和感。右目だけが金色に染まっているという不思議な状態に、何故こうも僕は驚いているんだ?
だってこの目は・・・
「くぅっ・・・!!」
「彼方様っ!?」
何だ、今僕は何を考えた。何故こんなに頭が痛む。そして何故、僕はこの色を当然と考えているのだろうか?
「シアお嬢様に報告を・・・」
「文月、待って。」
シアの元に行こうとしる文月を止めて、僕はもう一度手鏡を眺める。そこにはいつもの黒い瞳が映っていた。
「シアには、言わないで。」
「・・・しかしっ!!」
「少し、考えたいから。」
その一言に文月は根負けしたのだろうか、それ以上は何も言おうとはしなかった。
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