【闇へ】

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その日は確か午後から雨って、朝テレビが言ってた。 だから俺はカバンに折畳みの傘を入れているし、自転車通勤をやめて地下鉄を待っているんだ。 本当に雨なのか疑わしいほど外は晴天だった。 仕事の都合上、出勤は遅い。おかげさまで、満員電車は経験した事ない。 今日もホームは、まばらだ。 主婦におばあちゃん、女子高生に専門学生風のお兄ちゃん。 今から出勤の俺から見れば、なんとも気楽で羨ましい。 アナウンスが流れ、電車が来るようだ。 地下鉄独特の生暖かい空気が揺れている。俺は案外この空気が好きだ。 なぜか、下町の人情みたいな感覚を感じてしまう。多分、コレに共感出来る奴はいないと思う。 空気の揺れが大きくなり電車のライトが見えはじめた。 …今思えば、その時すでにその電車には、何か嫌な感じがしていた。 なんとなく、そんな気がしていた。
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