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小学校1年生のときでした。
家で可愛がっていた猫が死んだのです。
2種類のグレーの毛並みがとてもきれいだった、ただそれだけで幼い私の気を引くには充分だった彼女。
朝起きたら、ご飯を食べたら、家に帰ったら、お風呂に入ったら‥‥
何かをしたらすぐ「お姉さん」のところに行ってはそのきれいな模様を眺めていました。
時には手をビクつかせながら撫でたこともありました。
彼女は嫌がることもなく、――本当はただ面倒くさかっただけかもしれないけど――子供の単調な暇つぶしに付き合ってくれていました。
いくら猫と言っても私の生活の一部が欠けたのです。
初めての失いが身近な者の死なのがそれはショックで、私は火葬し終わって家に帰ってからも一人縁側で体を小さくしていました。
無意味に垣根の足元の盆栽を見ていました。
隣を見れば、真ん中が少しくぼんだままの座布団。
お姉さんがいつも通り座っているかも、なんて子供の期待は見事に非現実的なものでした。
私が物心ついたときからおとなしかった彼女は、所謂老衰というものでした。
眠るように、まぶたを下ろしたとお婆ちゃんが教えてくれました。
自然なこと、そう、当ことだけど……
また目の奥が熱くなって、俯いていた顔を上げて鼻をすすったときでした。
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