序章

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 本当は、ずっと気付いていた。  気付いていたから、知らないふりをしていた。  “そこ”から───“それ”から目を背け、口を閉ざし、何も知らないふりをしていた。  いつか全てが巡り来て、如何なる悲しみが──或いは試練が──襲い来ることも、予想出来ていた。  出来ていたから、黙っていた。  しかし、“彼ら”が。  他ならぬ“彼ら”が、気付いてしまった。  揺るがしようのない事実に。  消しようのない真実に。    本当の問題は、まだ解決していないということに───。
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