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シェルヴィスは病床に臥{ふ}せっていた。
原因不明の病は日夜皇子を苛{さいな}み、近隣各国から多くの優秀な医師が集められた。
しかし、誰一人としてシェルヴィス皇子の病の原因を解明出来ず、無念の帰国を余儀なくされた。
この事態をスリーアナ国民は重く、シェルヴィスは冷静に受け止めた。
地下書物庫で医学書を読み返したいというレンシェの申し出を、彼が許可しなかったのもこのせいである。
「もう良いのだ、レンシェ。分かっておる。こうなることは避けられなんだ」
「…………」
「それよりも、私は思い出したのだ」
シェルヴィスの双眸は、黒い。その意味するところを、シェルヴィスは分かっていた。
「エルトとリューリィの2人……、リミテア村で春来祭の時に会うたが初対面ではないな?」
「……………」
「それより以前、『厄災の年』を食い止めんとの戦いに於いて、我らはあの2人と会うている」
「…………」
「『厄災の年』を起こさんとしていたロゼウィン・モーレ=オトワールを討ち伏すため、私はそなたの内に在った『シュトラウス』の存在を受容し、エルトの内に在った『グレイル』と共に、オトワールを……」
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