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シェルヴィスは大きく息を吐き出し、顔の前に筋張った手をかざした。
しなやかな指の長い手には、剣胼胝{けんだこ}が幾つも並び、ただ内々に育てられた存在でないことを証明している。
闇の異層からこの現世{うつしよ}へと召喚されて25年余り。四半世紀生きたわけだが、その道筋はあまりに波乱に満ち満ちていた。
忌まれ続けた人生。父からも母からも憎まれて生きてきた。
人と関わることすら拒絶した。
温もりのない西離宮。今も西離宮に住まうは、何の拍子に、あの心を根底から抉る眼差しに曝されるかと考えると、恐ろしくてたまらないが故だ。
レノリアを愛せたことは幸福だと思う。
仲間{とも}に恵まれたことも、これ以上ない至福だと思う。
であるが故に、シェルヴィスは彼らに依存し、執着している。
「……どの道、これが最期の転生となるか」
果たされないゲッシュがある限り、彼らは幾度でも輪廻転生を繰り返す。
「……闇を排してこそ、ゲッシュの就{な}るか。然らば私が朽ちねば事の終わらぬか……」
再びこの世に未来を望むことは、やはり許されないのだろうか。
シェルヴィスは物思いに打ち沈み、いつの間にか微睡みに落ちていた。
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