2.真夜中の使者

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 ラキタスは目を覚ました。  騎士としてあらゆる感覚を鋭敏に鍛えている彼は、例え熟睡していたとしても、不穏な気配には目を覚ます。  しかし今回は、不穏な気配を感じて目覚めたのではない。  レノリアの寝室の扉が開いたのだ。  ラキタスは音をたてぬよう慎重に、且つ素早く寝台に身を起こし、脇机に立て掛けてある長剣に手を伸ばした。  レノリアの寝室の扉が閉まり、辺りを窺う気配がある。  (……レノリア?)  ラキタスは闇の中で目を見張った。  レノリアの寝室を出て来たのは曲者ではなく、フィリムス国皇女レノリアその人である可能性が浮上した。  (何なんだ? こんな夜中に)  ラキタスの寝室は、レノリアの寝室のすぐ隣である。緊急用にと、一枚隔てた壁には扉まである。  それを使わないということは、ラキタスの手を借りたくないらしい。  しかし、その原因が全く思い当たらない。  シェルヴィス皇子とは夜中に媾曳{あいびき}しなければならないような、隠された愛でもない。  レノリアに夢遊病歴はないし、使者が来たならラキタスにも連絡がくる筈だ。  レノリアが扉の前から離れる気配がある。ごく僅かな衣擦れの音も、騎士たるラキタスの耳にはしっかりと聞こえ、更には布地の種類も特定出来た。
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