2.真夜中の使者

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 (あの薄絹……羅{ら}だな。しかも防寒用にか、ガウンも羽織ってるみたいだ)  羅の寝衣ということは、やはりレノリアである。  追いかけるために寝台から下りようとして、  (───うっ!?)  ラキタスは瞠目した。  体が動かない。  寝台に膠付{にかわづ}けされたかのように、全く動けない。  首から上も下も、全く自由が利かない。  筆舌に尽くしがたい恐怖に、ラキタスの総身が冷や汗に濡れた。  唯一動かせる目だけをあらゆる方向に凝らしたラキタスは、その碧眼を険しくした。  いつの間にか、1人の男が入り口の扉にもたれて腕を組み、ラキタスを見つめている。  世の夕陽全てをそこに集約したかのような赤毛は長く、腰まで伸びている。こちらを見つめる切れ長の鋭い双眸は、ヒトならざる金。瀟灑{しょうしゃ}とは言えないが、豪奢と言うには些か華美に欠ける衣装で長躯を包み、腰には立派な大剣を佩{は}いている。  「……久し振りだな、ラキタス」  神でさえ平伏しそうな儼然{げんぜん}とした声で、男は言った。  「新たき未来はどうだ、楽しめているか?」  「……何者だ」  ラキタスの低い誰何{すいか}に、男がくつくつと笑った。
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