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「この姿では分からぬか? それとも、何も思い出していないのか……」
「何の話だ」
「ならば思い出させてやろう」
男は悠然とした足取りでラキタスに歩み寄る。衣服の装飾品や装身具と言った、金細工が音をたてる。
手甲を装着した男の手が、ラキタスの眼前で開かれた。
「───っ!!」
途端に襲ってきた怒濤が如き記憶の奔流に、ラキタスは声にならぬ叫びをあげる。
狂った走馬灯が収まった時、ラキタスは寝台に頽{くずお}れ、大きく息を乱していた。
「思い出したか?」
男の無情な問いに、ラキタスはあまりの息苦しさに涙ぐみながら頷いた。
「これで自己紹介もいるまい?」
ラキタスは再び頷いた。まだ言葉で答えるには、肺に空気が足りなかった。
しかし男は傲然と頷いた。
「そうだ、私だ。シュトラウスだ」
シュトラウスは勝手に窓を開けた。
冷たい夜風が肺に溢れ、ラキタスは咽せ返る。
冷然とそれを見るシュトラウスの長髪と装身具が、夜風に揺れている。
つまり彼は今や霊台などでなく、1人の存在として、その肉体が確立されているということだ。
「何故、貴男が此処に?」
いくらか落ち着いたラキタスが尋ねると、騎士が落ち着くのを待っていたシュトラウスが答えた。
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