2.真夜中の使者

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 「お前に話がある。ラキタス・セルハート卿」  「……“私”にですか?」  「そうだ」  シュトラウスは寝台の脇に椅子を寄せ、腰を下ろした。  「今レノリアが、グレイルの呼出しに応じている」  「グレイルと皇女殿下が密会をしていると仰る?」  「その通りだ」  ラキタスが無意識のうちに敬語になっていることに、シュトラウスは気付いていた。  元よりこの騎士は、騎士の中でもとりわけ礼儀正しい。  「恐らく誘発をしている筈だ。───お前の愛する者を殺せ、と」  一瞬、ラキタスの動きが完全に停止した。  シュトラウスがやや首を傾けて様子を窺おうとすると、唐突にラキタスは声を発した。  「はっ!?」  夜気に響く鋭く裏返った声に、逆にシュトラウスが狼狽した。  「声を落とせ。他の者が起きる」  慌てて口元を押さえる素直な反応に苦笑しつつ、シュトラウスは彼と距離を置く。  「意味するところは過{あやま}つことなく理解したようだな」  「つまり姫さまに、シェルヴィスを殺せと話しているということと察して問題ありませんか?」  「平たく言えばな」  「何故そのような……。今のシェルヴィスが動けないことくらい、知っているでしょう」
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