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そこまで言い、ラキタスは眉を寄せた。騎士にしては秀麗な面が、難しげに曇る。
「動けないからこそ……?」
シュトラウスは口端で笑う気配を見せた。
「やはり頭の回転は良いようだな。手間が省ける」
「お待ち下さい。仮にシェルヴィス殿下を殺すことが目的であったとしても、理由がありません」
シュトラウスは僅かに眉を上げた。
「本当にそうか?」
「え……?」
訝しげに眉をしかめるラキタスに、シュトラウスは畳み掛けるように言う。
「あの男の根本を、まさか貴様が理解しておらぬ筈もあるまい……?」
ラキタスは激しく息を呑み、喘いだ。限界まで見張られた碧眼に、数々の感情が閃く。
「まさか、貴方がたは……貴方がたの目的は……!」
「そうだ。我らの目的は、永劫の闘争に完全なる終止符を打つこと。即ち───」
「辞めてくれ!!」
ラキタスは悲鳴をあげた。
青ざめた唇がわななき、血の気を引いた面には恐怖が顕現している。
「そんなことは辞めてくれ! シェルヴィスは──あの人は、これから幸せになるんだ! 殺さないでくれ!!」
シュトラウスは答{いら}えを返さずに踵{きびす}を返した。
室内に取り残されたラキタスは、1人いつまでも頭を抱えていた。
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