2.真夜中の使者

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 そこまで言い、ラキタスは眉を寄せた。騎士にしては秀麗な面が、難しげに曇る。  「動けないからこそ……?」  シュトラウスは口端で笑う気配を見せた。  「やはり頭の回転は良いようだな。手間が省ける」  「お待ち下さい。仮にシェルヴィス殿下を殺すことが目的であったとしても、理由がありません」  シュトラウスは僅かに眉を上げた。  「本当にそうか?」  「え……?」  訝しげに眉をしかめるラキタスに、シュトラウスは畳み掛けるように言う。  「あの男の根本を、まさか貴様が理解しておらぬ筈もあるまい……?」  ラキタスは激しく息を呑み、喘いだ。限界まで見張られた碧眼に、数々の感情が閃く。  「まさか、貴方がたは……貴方がたの目的は……!」  「そうだ。我らの目的は、永劫の闘争に完全なる終止符を打つこと。即ち───」  「辞めてくれ!!」  ラキタスは悲鳴をあげた。  青ざめた唇がわななき、血の気を引いた面には恐怖が顕現している。  「そんなことは辞めてくれ! シェルヴィスは──あの人は、これから幸せになるんだ! 殺さないでくれ!!」  シュトラウスは答{いら}えを返さずに踵{きびす}を返した。  室内に取り残されたラキタスは、1人いつまでも頭を抱えていた。
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