3.密やかなる進行

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 「別に何の話もしてなかった。不安になるくらいなら、そんなに眉間に皺を寄せるな」  「ごめん………」  悄然と俯くレンシェに、エルトは肩を竦めた。  「謝れと言っているわけじゃない。そんなに思い詰めるなと言っている」  「………………」  「シェルヴィス殿下のご病気に心を割くのは分かるが、些か没頭し過ぎてはいないか?」  レンシェは力なく頭を振った。長い灰銀色の髪が弱く揺れる。  「シェルヴィスのことだけじゃなくて……」  「財政か?」  エルトがやや首を傾げて問うと、なぜかレンシェが吹き出した。  「何だ?」  「ごめんごめん」  小さく肩を震わせて笑いを堪えながら、レンシェが顔を上げた。  「なんかエルト、わたしが政治に関わってるから? 最近、会話が固い話ばっかり」  「俺のせいではないだろうな。多分」  「多分、なんだ」  笑って、レンシェは窓辺を離れた。  「でもね確かに、お金絡むと、話、ややこしくなるよね」  「人の欲が絡むからな」  「そういうこと、だと思う。それに国のお金は、国民から納めてるから。やたら搾取しちゃ、やっぱりいけないよ」  「何を当たり前のことを言っている」
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