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「別に何の話もしてなかった。不安になるくらいなら、そんなに眉間に皺を寄せるな」
「ごめん………」
悄然と俯くレンシェに、エルトは肩を竦めた。
「謝れと言っているわけじゃない。そんなに思い詰めるなと言っている」
「………………」
「シェルヴィス殿下のご病気に心を割くのは分かるが、些か没頭し過ぎてはいないか?」
レンシェは力なく頭を振った。長い灰銀色の髪が弱く揺れる。
「シェルヴィスのことだけじゃなくて……」
「財政か?」
エルトがやや首を傾げて問うと、なぜかレンシェが吹き出した。
「何だ?」
「ごめんごめん」
小さく肩を震わせて笑いを堪えながら、レンシェが顔を上げた。
「なんかエルト、わたしが政治に関わってるから? 最近、会話が固い話ばっかり」
「俺のせいではないだろうな。多分」
「多分、なんだ」
笑って、レンシェは窓辺を離れた。
「でもね確かに、お金絡むと、話、ややこしくなるよね」
「人の欲が絡むからな」
「そういうこと、だと思う。それに国のお金は、国民から納めてるから。やたら搾取しちゃ、やっぱりいけないよ」
「何を当たり前のことを言っている」
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