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何を切っ掛けにしてか、シェルヴィスもそれらを思い出した様子だ。
こうなってくると、当然ながらフィリムスに帰郷しているレノリアとラキタスの様子が気になる。
彼らも思い出してくれているだろうか。
そして、もし───
(もしわたしが、わたしに課せられた使命を果たせなかったら……やっぱり彼らにも風は向くの?)
それは、レンシェが最も恐れる事態だ。
(シュトラウス……)
レンシェは切なく、かつて己が内に宿っていた霊台の名を呼ぶ。
(何故、こんな哀しい運命をシェルヴィス達に課したの? 貴方は……わたし達の味方ではなかったの?)
心が挫けそうになる度、声だけで励ましてくれた存在はレンシェの内を離れ、独立した個体となってしまっている。
(貴方と、もう一度話がしたい……。今回だって、きっと打開策はある。……そう信じていいのよね? シュトラウス……)
かつては問えば返った声も、今はない。
エルトが話し掛けてくるので笑顔で相槌を打ちながら、レンシェは思案に暮れた。
誰にもらったということもない、レンシェの眸によく似合う紫水晶が嵌め込まれた耳飾りについて、エルトが触れることはなかった。
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