4.七夜過ぎて

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 あの夜から8日が経過しているが、我ながら情けないことに、どんな顔でレノリアに会って良いやら見当もつかない。  同僚にして部下であるデュランにレノリアの夜間身辺警護を押しつけて、騎士団の砦で日々を過ごすのも、そのせいである。  (デュランのヤツ、怒ってるだろうな……。気ぃ短いんだよなぁ、あいつ)  話をすり替えるわけではないが、レノリアを恋しく想う男は多く、既に恋人のいるデュラン以外に、この仕事の適任者はいなかったのだ。  我儘勝手な理由など口に出来よう筈もなく、新米騎士を教育せねばならぬから、と出任せた言い訳が看破されるのも時間の問題だろう。  レノリアの方も、ラキタスに言及の書状を寄越すでも使いを出すでもない。グレイルに何を言われたにせよ、彼女も悩んでいるに違いない。  シェルヴィスが倒れたとの報せがあって直後は、盛んに優秀な医師を送り、報告を受けては書庫に出入りしていたのに、あの夜以降、それも辞めた様子だ。  やがては一国を担うシェルヴィスに嫁ぐということは、スリーアナの人間となり、城主の肩代わりを任されることもありうるのだ。  城主の本妻{つま}は内向きのことに采配を下し、領地全体の家計を預かる立場となる。
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