5.晩夏の一幕

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 「あぁ、そうか。だからか!」  やっと得心がいった風のラキタスに、レンシェはくすくすと含み笑う。  「ついでに言っちゃうと、女官さん達、ラキタスのこと、気になってるみたいよ?」  「何で?」  「やっぱり異国の騎士って、見慣れてないから、かっこいいもん。何よりラキタス自身、かっこいいし」  ラキタスはにやつきながら微かに顔を背けた。  「別に俺は、かっこいい騎士じゃないけどな。シェルヴィスの方が断然かっこいいってのに、目が肥えないのが凄いや」  レンシェは小さく吹き出した。  「シェルヴィスは、恐れ多くて長時間、拝んでられないんだって。よく分かんないよね」  「あら、そうですかしら」  小首を傾げ、ヴェネッタが言う。  「実際にお会いしたことはありませんけれど、シェルヴィス皇太子殿下は、それはそれはお美しく尊い、猛々しきお方と聞き及んでおりますわ。身近にシェルヴィス殿下をご覧になっているなら、胸がドキドキしても仕方ありませんわよ」  「夫人も、シェルヴィス殿下には、お心を奪われてしまわれますか?」  ラキタスの無粋な質問に、ヴェネッタは微笑して答えた。  「それはきっと、一時の迷いでしょう。わたくしはグーウィン家に嫁いだ身ですもの」
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