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第二廓に客間の準備が出来た旨を聞くと、レンシェは手慣れた風に各廓を担う女官達にグーウィン夫人を任せた。
「なんか、すっかり慣れた感じだな?」
ラキタスが言うと、レンシェは苦笑して手を振った。
「そんなこと、ない。まだ慣れてないもん、わたし。全然」
「そうかぁ? 女官呼び付ける感じ、ちょっと貫禄あったぞ」
「女官さん達、『何かございましたら、是非わたくしに!』って、皆言ってくれるんだもん。だから、助かってるの」
「成程ねぇ。皆、大神殿の賢者様に、お近付きになりたいわけだ」
レンシェは小首を傾げてラキタスを見遣った。
「どして?」
こんな風に尋ねられては、エルトでなくとも彼女を可愛らしいと思うに違いない。
ラキタスは妙に照れ臭くなって鼻の脇を掻きながら、ややレンシェから眸を逸らした。
「そりゃレンシェが頭が良くて、話上手の聞き上手だからだろ?」
茶器に伸ばしていた手を止め、レンシェが目を瞠{みは}る。
「話上手、聞き上手? わたしが?」
「ああ。何、自覚ない?」
「ないない。わたし、自分で勝手に喋るよ、いっぱい」
「でも話し方上手いから、聞いてて退屈しないんだよ」
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