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レンシェは首を捻っている。まるで自覚がないらしい。
尤も、あまりそれを自覚されて鼻の先にぶら下げられても、付き合い難くなるだけだ。
「それにしても、レンシェと話すの、随分久し振りだな」
「ん、だね」
「考えてみたら、あんま俺達だけで話したことないんだよな。何でだ?」
「忙しかったから、じゃないかな」
当たり障りのない返答に、ラキタスは内心で眉を寄せた。
平素ながら、レンシェは何を考えているのか相手に読ませない。
(覚えてるのか、そうじゃないのか……。カマかけても躱されそうだけど……)
「なぁ、レンシェ。半年前、レンシェは何してた?」
きょとん、と宵闇の眸が丸くなる。
「スリーアナにいたよ」
「本当に?」
レンシェは口元に運んでいた茶器を置き、真摯な眼差しでラキタスを見据えた。
「連絡なく来るから、何か話したいこと、あるのかなと思ったけど。思い出したの?」
逆に訊かれ、ラキタスは戸惑った。
「えぇと、うん。思い出したって言うか……思い出させられた?」
レンシェが眉宇を寄せる。
「思い出させられた?」
「──俺、会ったんだよ。シュトラウスに」
レンシェの表情が凍り付いた。
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