21人が本棚に入れています
本棚に追加
「シュトラウスに? いつ!?」
「えっ? よ、8日前の夜」
「……何で、わたしには……」
今度はラキタスの表情が凍った。
「レンシェには会いに来てないのか?」
「………うん」
レンシェは灰銀色の髪を掻き上げた。
「でも、そっか。やっぱり……」
「やっぱりって?」
「シュトラウス、ラキタスのこと、すごく気に入ってたから。真っ先に会いに行ったのかな、って」
ラキタスは碧眼を屡叩{しばたた}かせた。
気に入って貰うのは大変結構なことだが、彼にそこまで気に入られるようなことなど、しただろうか。
どちらかと言えば、ロゼウィンを討つ旅の間シュトラウスは、シェルヴィスを気に掛けていただろう。
「あ、変な意味じゃないよ、勿論」
沈黙をどう解釈したのか、レンシェが焦ったように言う。
「そういう誤解はしてないから。……レンシェは? レンシェは思い出したのか? それとも、覚えてた?」
「……覚えてた。それ、役目だから。わたしの。わたし、覚えてる、色んなこと」
円やかに膨らむ胸に手を宛て、レンシェは瞼を下ろす。
「本当に色んなこと覚えてて、すごく……幸せ、かな」
「……よかった」
ラキタスは優しく微笑した。
最初のコメントを投稿しよう!