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レンシェばかりが何もかもを覚えているのは不公平だと感じていたが、やはりレンシェは強い。きちんと受け止め、それを幸せだと感じている。
(……俺、置いてかれてる)
レノリアに何も言わず、勝手な判断でここまで来てしまった己が、急に情けなく思えた。
シェルヴィスはロゼウィンを討つ旅の中で、力強い眼差しを向けてくるようになった。
レノリアは一層美しく、清らけく、芯が強くなった。
クィティナは元より大人しやかで、到底追い付けない。
エルトとリューリィの変化など、今更挙げるまでもないだろう。
では、自分は?
何か変わっただろうか。視力を失ったことすらあったのに、そこから前進していないのではなかろうか。
(……駄目だ。俺1人、全然前に進んでない)
「……ねぇ、ラキタス」
黙ってラキタスの様子を眺めていたレンシェが、深い静謐を湛えた眸で微笑んだ。
「頑張っちゃ、駄目だよ」
「……え?」
「大丈夫。わたしが、何とかするから。だから、ラキタスは頑張らないで。自分、責めるの、辞めよう? ね?」
「レンシェ───?」
その、深い微笑に込められた意味が、何かラキタスには想像もつかない程重いような気がして、ラキタスは言及を憚られた。
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