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全ての星が変わってしまった。
だから、空を見上げなくなった。
今からでは遅いけれども、ただの女になろうと思った。
そうなることで、新しい自分として、珠として、生きてゆけるはずだから――。
そう、人の気持ちは不思議なもの。
珠は、次第に泣くことを忘れた。
幾日、数ヶ月。
経つに連れて、変わる。
衰弱しきった体は、徐々にもとの柔らかさを取り戻した。
時折、彼――忠興は珠の様子を伺いにわざわざ来る。
そう、今日もまた、彼は来ていた。
彼を拒む理由などない。
珠は相変わらずの笑顔で彼を招き入れた。
ただ、変わったのは、お帰りなさいが、いらっしゃい、になったこと。
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