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離縁はしていない。
けれども、彼には新しい女が居た。
妻なのか、愛人なのか。
珠にとってそれはどうでもいいことだった。
「――変わりないか……?」
忠興の言葉に、珠の体がびくついた。
動揺が伝わらないよう笑みを浮かべ愛しい彼を見つめる。
「――はい」
いつの間にだろうか。
彼に笑みを向けられるようになったのは。
あんなに、二度と会いたくないとさえ思っていたのに――。
もう触れ合わなくなってどれほど経つのかさえ解らない。
指折り待つのをやめた。
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