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そっと、忠興は珠の肩を抱き寄せる。
答えを聞かなくとも、解った。
珠が、戸惑っているのなら。
引いてやればいい――。
手を伸ばして、掴めばいい。
少し細くなった肩を抱き寄せたまま、忠興は珠の髪を撫でる。
漸く、触れ合うことができた。
あれほど毎日寄り添っていた、当たり前の温もり。
その温もりが、漸く戻ってきた。
珠は静かに涙を零し続ける。
泣かない、と決めていたはずなのに。
余りにもの嬉しさに涙が止まらない。
ただ、ただ、彼の側に居たい。
願っていたのは、それだけ。
その夜、互いの熱が絡み合う中、珠は久しぶりに夜空を見上げた。
月は陰りなく輝き、星も煌めいている。
「星が……」
掠れた声で告げられると、忠興は珠の言葉に耳を傾けた。
「離れていた星が……共に輝いて居ます…」
離れていた星が隣り合い輝きを放っている。
それは紛れも無い、ふたりの星。
珠は思う。
いや、願う。
そのまま輝き続けていて――と。
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