心のまにまに

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ある日、珠は強行手段に出た。 話し合いから帰ってきた忠興の顔面目掛けて、みかんを投げ付けたのだ。 見事、みかんは忠興の額に的中し、忠興は驚きと痛みに素っ頓狂な声を上げた。 そして、足元に転がるみかんに目を向けた。 みかんは緑色――そう、まだ熟れていない固いみかんを珠は投げ付けていた。 そのみかんを一瞥し、忠興は物言いたそうな珠を見遣った。 流石に怒られるだろうか…珠は忠興の顔色を伺う。 その表情は怒ってはいない。 むしろ、不思議そうな表情で珠を見ている。 「――珠姫?」 忠興にとっては訳が分からないこの状況。 取り合えず、忠興は彼女を呼ぶ。ようやく呼ばれたことに珠は笑みを零す。 ただ、会話のきっかけが欲しかっただけ。 珠は一歩、足を進め、彼を見上げた。 忠興は、まだ何かされるのか、と生唾を飲み込む。 .
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