心のまにまに

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「――珠姫、そなたは聡明な方だと聞く。何かあってのことではないのか?我らは夫婦、隠し事などするものではない」 まるで幼子を宥めるような優しい声で忠興は告げた。 その言葉に、珠はようやく閉ざしていた口を開く。 自分の想いを――。 「珠は…忠興様のことが知りとうございまする。妻として女として…お側に」 その真意を聞いた忠興は笑みを零し、珠の艶のある黒髪を撫でた。 珠のその心が嬉しい。 忠興もきっかけを探していた。 ふたりの距離を埋めるきっかけを――。 お互いが模索していたから、距離が開いてしまった。 若さ故に、何も知らない姫があのような暴挙にでてしまったことも、許せてしまえる。 「――珠姫…いや、珠」 改めて、名を呼ばれたことに珠は目を丸くして忠興を見つめた。 目に入る彼は優しく笑っている。 珠は安堵し同じように笑みを零す。 そのまま肩を抱かれるように珠は奥へと向かった。 .
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