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食事を済ませ、静かな眠りの時間が訪れた。
お互いのことを少しずつ話し、少しずつ知る。
寝所にふたり。
暗闇の寝所を照らすのは月明かりのみ。
ひとつの褥の中で向き合い、まだ話は進む。
時たま触れる肌の温度の違いに戸惑いつつも、手の指先だけを重ねている。
そんな中、珠はゆっくりと口を開く。
「――忠興様…珠には星を詠む力があります」
その言葉に忠興は不思議そうに珠を見つめた。
当たり前か。
突然、変わった力を持っているなどと告げたのだから。
そう、自分には星を詠む力がある。
父もそうだ。
明智は代々、星を詠み陰陽を司る一族の末裔。
だが、珠は自分にその力があることを誰にも話してはいなかった。
母にも、父にさえも。
話してはいけない、と星が告げたのだ。
だから、黙していた。
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