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…いつの間に眠りに落ちたか、強い月明かりに照らされ目覚めると、時計は午前2時を指していた。
出勤時間まで、あと4時間。
すっかり眠気が覚めてしまい、このまま無駄に過ごすのも、何となく嫌だ…と思った。
幸い家族は夢の中らしく、リビングに人気が無い事を確認すると、身支度をしてそっと玄関を出る。
空が青味を帯びて来た。
新聞配達のバイク音もする。
ヤバい、そろそろ母さんが起きて来る💦
掘り続けながら、ふいに玄関を見たその時、
『カツン☆』
何かがスコップに当たった。
もしかしてこれは、もしかするモノ?!
俺はスコップを放り投げ、手で土を掻き分けていった。
「何だコレ…?」
出て来たのは、メルヘンチックな小汚い箱が一つ。
そして何故か容易に開かないそれを持って、自室へ戻る。
泥だらけだったそれを磨いてみたら、メルヘンさが増した…。
ピンクだ。
それも強烈なピンク色。
苦労して手に入れたのに…💧
開閉不能の箱をジッと見つめ、ゴミ箱へシュートIN。
気を取り直し、何事も無かったように身支度を整え、出勤時間を迎えた。
夕方、商談をいくつかこなし、クタクタになりながらようやく帰宅。
夕飯が出来る迄仮眠する事を母さんに告げ、自室へ向かった。
まったく…仕事だけならまだしも、今朝の無駄な労働のせいで階段を上るのも億劫だ。
30分でも良い、ゆっくりと寝たい。
このドアを開けば、横になれ…る…
あれ…?
今、凄い違和感が…
ココは俺の家、そしてこの部屋は俺の部屋…の筈。
寝惚けたのか?
俺は恐る恐る確認しつつ、もう一度ドアを開けた。
そして何故か、腹部に重い衝撃が…
「乱暴だなっ!弥次郎のクセに!」
な…なんだ…?
今、蹴られたよな…?
ってか、何で蹴られたんだ…?
「お前が!俺様に対して!無礼を働いたからだっ!!」
「何か、無茶苦茶言ってないか?あのさ、そんな覚えないんだけど。だいたい、ここは俺の部屋だし」
「弥次郎のクセに、生意気な口をきくなっ!」
「さっきから何言ってんだ!?俺は弥次郎じゃない、弥次郎は俺の祖父さんだっ!」
子供の動きがピタリと止まる。
「ん?んぅ…そう言われれば、確かに弥次郎より若いような。そういや、とき子はどうした?」
コイツ、何でその名前を知ってるんだ?
年齢的にも、二人との接触は有り得ないんだけど。
答えるかどうか判らないけど、一応聞いてみるか。
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