拳の中

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「ねぇ……。……もういいよ……。やめよう?ね?」 「何言ってんだよ!?」 お昼が過ぎた土曜日 未だ“ゆとり教育”が実施されていないので、土曜日も学校と言うのは普通な時代 そんな時代 そんな学校 そんな廊下 そんな場所――― 「ほ、ほら!別にこんな怪我どおってことないから!!」 二人の男子生徒が言い争っている 少し背の低めの男子生徒。顔には大きなバンソコウが貼られている 「あんな奴、ぶん殴ってやるから心配するな」 対し、背の高い男子生徒。強く握り拳を作り、一歩一歩進もうとする 「だ、大丈夫だからっ……」 そんな彼の学生服を引っ張り引き止める男子生徒 「離せ!!シュウ!!敵は俺がとってやる!!」 「僕、死んでないから!!」 シュウと呼ばれた男子生徒は必死で引き止める それに反発するように――― 進む男子生徒は、グルッと首を回し、視線を合わせ その頭に生える真っ赤な髪を掻き上げ――― 「無問題(もーまんたい)。この《三谷原優(みやはら ゆう)》に任しとけ!!」 そう言い、腕を振り払った―――
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