月曜日

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   「大丈夫です!」と答えた彼の元恋人は、三日ともたなかった。  周囲がどうしてか訳を聞いても、彼女は「答えたくない!」と、耳を塞ぐばかりだった。  きっと彼女にも認めたくない、ありえない何かしらがあったのだろう、と周りは各々、勝手に想像した。  なのでそれ以来、彼に告白をした女生徒はいない。  もちろん、憧れている女の子は腐る程いる。 この学校の女生徒の八割がそうであると言っても良い。  モテ方は半端じゃない。 でも付き合いたくはない。 そんなレッテルを張られた彼は、今もぼうっと窓の外を眺めている。  だから、決して彼を変人扱いしているのは知香だけではないのだが、どうしても彼女は、自分が一番そういう目で彼を見ていると思えてならなかった。  でも、いい人なのかも……。  知香は先程の出来事を思い出し、写宮をじっと見つめた。  途端、彼がいきなりこちらを向いたので、知香の心臓は砂利道の車の座席のように、勢いよく飛び跳ねた。 落ち着かせた呼吸が、今度はまた違った意味で荒くなる。  なっ、なんで!? め、め……目が合った!?  あわあわとしていた知香の耳に、 「ホームルーム始めるぞ!」 という、荒井教諭の大きな声が入ってきた。  知香は、ほおっと息をついて脱力した。 肩から力が抜けていくのが分かる。  何だぁ、それでか……。 何だか安心したのか、残念だったのか……  ──ん?  はた、と彼女は自分の思考を振り返って疑問を持った。  ──「残念」?  知香は、頭の上をぱっぱっと手で払う素振りをする。  何、それ!  戸惑った彼女は、教壇に立つ荒井に目を向ける。 そして、再びあの気分の悪さを思い出すのかと、先が思いやられた。  しかし、今まではそれを忘れていられたことに知香は驚いた。 そして、それが写宮のおかげであることにも気づいたのである。  
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