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「この学校って、マトモな人間いないのかしら」
ご飯を口に詰め込みながら、知香は苛立たしげに言い放った。
母親の作ってくれた弁当を広げ、ひとり屋上で昼食をとっている。
箸を噛んだまま、彼女は休み時間の出来事を頭の中でリピートしていた。
「桜井さん、本当に知らなかったの? 穂崎さんの事」
「学校中大騒ぎだぜ。今日は職員会議で昼まで自習らしいし、テレビもまだ校門の辺りうろついてるよ」
「クラスメートがそんな目に合うなんて、ショックだわ……」
「怖いよねぇ。殺人鬼がうろついてるかもしれないんでしょ?」
「連続殺人とか起こったらどうするの?」
「やめてよー」
知香の机の周りに集まり、口々に好き勝手な事を言っているクラスメート。
知香は不機嫌そうに、それらの話を聞いていた。
向こう側では派手女のグループが、憎らしげに知香を睨んでいる。
写宮に叱咤された事を根に持っているのだろう。
写宮が変わり者である事が知れた今でも、彼の人目を引く容姿に変わりはない。
写宮に憧れる女生徒はたくさんいるのだと、知香は改めて認識させられた。
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