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正直うんざりしていた。
解放されたいと思っていた。
それをどうして、この人が知っているのだろう?
誰にも言わず、ひっそりと隠してきた正直な思いを、どうしてろくに話した事もない、こんな雲の上の人が知っているのだろう?
──でも、私は……
知香はゆっくり顔を上げた。
写宮の顔は逆光でよく見えないが、その目には他の人間にはなかった、彼女を救おうとする光があった。
知香は今、切実にそれを欲していた。
そしてそれに向かおうと、無我夢中に手を降りかざした。
「助けて下さい」
知香は深々と頭を下げ、手をまっすぐ前に伸ばして握手を求める格好をした。
「私、償いたいの」
「君は、償わなきゃいけない事なんかしてないでしょ」
「──ううん。……たとえ嫌な思い出ばかりでも、有紗は友達だった。それは紛れもない事実なの。その友達が死んでホッとするなんて、私こそ最低だ。だから、その気持ちを償いたい」
「…………」
「有沙を殺した犯人を探したい。協力してほしいの。私は真相が知りたい!」
写宮は肘をついて寝ころんだまま、知香を見ていたが、
「じゃあ、お礼に毎日、学食の牛乳買ってね」と、微笑んだ。
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