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夜中に目が醒めて、今自分はどんな夢を見ていたんだろうと思った。
夢を見ていたということは知っているのだけど、夢の内容は覚えていない。
暗闇の中で、朧気に浮かんだ天井を眺めた。
猫は死んだと皆が言った。
あの猫はどうなったのだろう。
気になった。
結局あの後、野次馬を尻目に帰宅したから、猫がどこへ行ってしまったか知らない。
友達にメールを送ろうとしたけれど、友達も一緒に帰ったから知っているはずがないと思い至り、早々に寝てしまった。
珍しく、いつもの妄想をする暇もなく寝入った。
今は何時だろう。
枕元の携帯を開くと、もう少しで夜明けだとわかった。
なのに部屋は残酷なほどに真っ暗で、太陽の気配など微塵も感じられない。
猫が可哀相だ。
自分も可哀相だ。
生きているということは、とても可哀相だ。
死んでいるというのなら、こんなに可哀相には思わない。
早く助けに行かなければならない。
可哀相から助け出さなければならない。
死んでいることにしなければならない。
自分は――。
静かにベッドから出た。
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