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次の日、学校に行くと友達が隣りの席に座った。
音楽の授業では、自由に席を取ることができるからだ。
机の真ん中には穴が二つくりぬかれていて、一体この邪魔な物は何のために開けられたのか、不思議で仕方がなかった。
先生の話を聞いたふりしながら、きっとこの穴を塞いでいた木材はとっくに焼却されて、煙となって空へ昇ったのだろうと思った。
だけど、その木材は死んだことになるのだろうか。
もしかしたら、木材となった時点で死んだことになっているのかもしれない。
じゃあ自分も存在している時点で、死んだことになっているのかもしれないな、と考えていると、友達が話しかけてきた。
「どうやったら手首が切れるかな」
カッターを片手に持って、友達は笑っている。
「キャベツだと思えばいいんじゃない?」
友達の細い手首を見つめながら、そう答えた。
再び机の穴をぼーっと見ていると、先生が叫んだ。
その目線を辿ると、隣りで友達が手首を切っていた。
周りの生徒達が一斉に騒ぎ始めた。
なるほど。カッターで切るには、キャベツは向いていないんだなと思った。
切り口から滲んだ血液は、ボールペンの落書きのようだった。
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