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「はい。じょうろです」
じょうろだった。
少女が差し出したのはどこからどう、どの角度で見ても100%じょうろだった。
「………」
どうしたものか、という風に沈黙する少年。
「まだなにか?」
心の底から分からない様だ。
「……あのできれば飲む水を」
「ああっ!やだ、あたしったら。あなたがあまりに、クワやじょうろが似合いそうだったから、つい。
ちょっと待っていて下さいね」
また家に向かう少女。
三回目。
「はい。水とパンです」
今度こそ少年の求めていたものだ。
「い、いただきます!」
少年はあっという間に平らげてしまった。
少女はそれをほほえましそうに見ていた。
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