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「蒼(そう)、朱(しゅ)……今日で修練は終わりと致す」
山奥にあるなお暗い鍛錬所に暗い覇気のある声が響く。
顔を白い眉と髭に覆われ、片目を長い傷で潰した老人が放った声は煙をくゆらせ草木をも黙らせた。
「……っ」
その緊張感からか朱は奥歯を噛み締め、蒼は床を手のひらで押した。黒い床になお黒い影が這う様は、この現状を指すようで余計つらくなる。
白羽隊隊長である老人が放った言葉の意味を、二人はもう知っていたから。
「二人の道はこれにて別れた。それぞれの天命を全うせよ」
「はっ!」
十五、六になったばかりの少女達は今
「それに伴いそなたらに名を授ける。これをもって蒼空(そうくう)、朱空(しゅくう)と改めよ」
それぞれ違う空に向かって飛び立った。
これがこの物語のはじまり――。
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