蒼紅の空

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  斈国王都は白羽隊のある山よりも南東に位置しており、海に注ぐ川に恩恵を受けている。   さして大きな国ではないものの政治学に長け、王の手腕の名高い国だ。     政治の世界での血生臭を生き抜いてきた王であるだけに一筋縄ではいかない人物であることは容易に想像出来る。   王直々に遣わされた使者が用意した馬車に揺られ、蒼空はただただ考えていた。   隊を離れ、普通の生活をすることは幼い頃からの夢だった。   手が血に染まることも 闇に溶けて魂を狩ることも   必要のない生活。     蒼空にとってそれは夢世界の桃源郷に思えた。       朱空と共に平凡な世界に降り立つこと。それだけを夢見て隊の幹部まで上り詰めた。   その鍛錬が【普通】や【平凡】から離れていっていることを自覚しながらも   いつか来る脱退の為の【最終任務】を生きて終えるその日を思い描きながら……ひたすら生と死の狭間を潜り抜けて来た。     たとえこの任務で命を落とし、自由がかなわずとも   僅かな可能性にかけて私は戦う。     戦うことしか知らないから。     その目に強い炎を灯した少女を、運命は国の頂点に運びゆく。   先に待つものは【死】か【自由】か。   そのことはまだ誰も知り得ない……そんな旅立ちの日であった。    
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