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だんだんと12月の灯りが彩り始める。街は足早に進み、歩く人の顔は笑っている。
そんな街中に、一人立ち止まる女がいた。
ドコに向かうでもなく、何を買うでもなく、街中でじっと固まっているその女は、決して地味ではなくどちらかというと派手な見てくれではあるが、心なしか寂しげな面もちをしている。携帯電話の着信音が鳴り、ブランドのバックからおもむろに携帯電話を手に取ると、眉をひそめた。
「知らない番号…」
デンワに出るか少し迷ったが、明るいイルミネーションと恋人達でざわめく街中に一人いるコトを思うと、知らない番号であれ、話し相手ができるのでデンワに出てみようという気になるものだ。しかし女は、画面を数秒見つめただけであった。
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