手にとるグラス

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「もしもーし、メシでも行かない?」 「…あのぅ、すみません、どちら様ですか?」 「え?あれ、俺、間違ったかな」 声は曇らせてみたが、検討もつかないデンワの声とノリに、気分が上がる。誰なのか必死で考えなくてはならない展開になったからだ。とても暇がつぶれる。 「あれ、理子じゃないの?」 「そうだけど誰よ?」 「でも声が違うんだよな…何の仕事してんの?」 「…だからぁ、あなたは誰って聞いてんでしょ。どうしてあたしばっかり答えなきゃいけないのよ!」 正解をしぶるので、デンワの向こうの男にだんだんイライラしてきた。イルミネーションはキラキラ目につくし、街を歩く恋人達はヘラヘラ笑っているし、いきなりデンワをかけてきたこの男にまでバカにされている気がしてきたのだ。
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