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理子は看護師で、中山は、理子が前に働いていた大学病院に勤める医師である。2年前、理子が未だその病院で働いていた頃、休みの日に症例研究のために私服で出勤してる理子を中山がナンパしたのをきっかけに知り合った。当時、理子は中山の誘いを全て断っていた。一年位経った時に中山から連絡がこなくなったコトに気づき、携帯電話のメモリーを消していたのだ。
「伊部ですよ、先生、わかりますか?」
「………あぁ!○×病院に行ったよね?前、うちの大学病院の整形外科にいたよね?俺が声かけたらさ、実は同じ病院の看護師さんだった、あの理子か!」
中山は笑い出した。
「先生、どちらの理子と間違えたんですか?」
むっとして理子は声色を変えて言った。中山はすぐに言葉を返した。
「理子もさ、俺の番号消してたってコトだろ?お互い様だよ」
「それはそうですけど…」
「久しぶりだな。元気か?何かの縁だ。メシにでも行かないか?」
強引で軽いノリに当時もいい気がせず断っていたのだが、こんなに派手に彩られた街中で、陰気臭くいた自分に灯りをともしてくれた中山に、今日は悪い気がしなかった。
「いいですね、行きましょう」
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