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【…はぁーい】
と奥でAさんのお母さんが僕に返事しながら出て来た。
「いらっしゃい、ちょっと待っててね」
と言うと、Aさんのお母さんはAさんを呼びに奥の部屋に入っていった。
今日はAさんは奥の部屋で寝ているらしい。
Aさんとお母さんの会話が漏れて聞こえてきた。
【…今日は帰ってもらいなさい】
【…やだぁ、上がってもらってよ】
【…あんまり無理しちゃダメよ、毛布にくるまって温かくしてなさいね】
【…うん】
お母さんが出て来た。
「今日はあの子の調子あんまり良くないから、上がって待っててね」
そう言われると、僕はいつもの縁側の隅に座った。
Aさんの弟がいつものようにチョロチョロと出て来て、無言だけど嬉しそうに僕の向かいに座った。
そして2人で、ブロックで遊び始めた。
しばらくすると奥の部屋から、白い毛布にくるまったAさんが出て来た。
まるでウェディングドレスみたいだ…。
Aさんは何とも言えない可愛い綺麗な笑顔を見せて、
「いらっしゃい」
と言うと、僕の横にチョコンと座った。
Aさんの頭にはもう、短いうぶ毛が少しだけしか生えていない。
今日はいつもより顔色も悪く、辛そうに見える。
僕はガラにもなく心配した。
間もなくAさんは僕の横でウトウトと眠りだした。
肩が触れるほどの距離で、小さな寝息をたてて眠るAさんが、とても幸せそうに見えて安心した。
肩越しにAさんのあたたかな体温を感じながら、僕も幸せだった。
おわり
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