初恋の思い出

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 駅前まで出た。 「たぶんもうすぐ」 「たしかコッチだ」 病院までの道中、駅を過ぎるのは覚えていた。 駅前までの道のりはなんとなく解っていたのだが、そこから先の記憶は曖昧だった。  偶然にも、幼稚園の時の先生が車で通り掛かり、僕に声を掛けてきた。 「なにしてるの!?こんな遠い所で!?一人で歩いて来たの!?」 なにしてるの?ってAさんに会いに行くのが目的だよ~なんて、その時の僕には解らなかった。 自分でも理由が解らなかったから、うつむくしかなかった。 「もう暗くなるし危ないから、先生がお家まで送ってあげる!さ、乗って!」 先生からすれば、僕の行動は奇行としか思えなかったのだろう。  車の中、さっきまで必死で歩いてきた町並みが、夕焼けの赤から夜の闇に染まっていくのを、僕は無言で眺めていた。
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