初恋の思い出

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 3学期も終わりに近付いてきた。  Aさんの家は、まるで空き家のように静まり返っていた。  Aさんが入院してからというもの、僕は全てのやる気を失っていた。  春休みが終わり、新学期になった。  小学3年生になったが、全く嬉しくなかった。  普通はクラスの再編成が行われるのだが、何故か2年生の時のクラスメイトのままで、担任の先生も一緒だった。 変わったといえば、教室の場所くらい。 その事が余計に、進学の意味を感じさせなかった。  始業式の後のクラスルームの時間に先生が、どう言われたのかは覚えていないが、こんな意味の事をクラスの皆に伝えた。   Aさんが、死んだ。  僕は、あまりにも突然に教えられた事実を、受け止める事が出来なかった。 全身から血の気が引いてゆく。 悲しいという気持ちすら感じない。 辺りが真っ暗闇に思え、そのまま意識をなくして倒れてもおかしくなかった。  帰り道、朝は気付かなかったが、Aさんの家が本当の空き家になっている事に気が付いた。 カーテンや家具がなくなっている。 割れた窓ガラスに貼ってあるパズルの厚紙だけが、あの頃と同じように残っていた。  Aさんには、もう会えない。 Aさんのお母さんや弟にも、もう二度と会う事はなかった。
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