初恋の思い出

16/17
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 月日は経ち、僕は幼児から少年になっていった。  学校からの帰り道、いつも一つの石コロを蹴りながら歩いた。  偶然だろうか…、石コロはよく、Aさんの家の庭に転がり込み、そのまま見失った。 そして手入れされる事なく荒れ果てたその庭で、新しい手頃な石コロを探した。  Aさんの家の庭から蹴り始めた石コロは、僕の家に着くまで見失わなかった。 というより、見失ってはいけない気がした。 田んぼや溝に落ちてしまっても、見付かるまで探しだし、また蹴って歩いた。  その当時は、なんの変哲もないその遊びが、何故かとても楽しくて仕方がなかった。 『いつか元気になったら、外で一緒に遊ぼう』  もし、死後の世界とか魂が存在するならば、その時もしかしたら、Aさんが僕の横にいて、一緒に遊んでくれていたのかもしれない。  あの、綺麗な笑顔を浮かべて…。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!