初恋の思い出

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 Aさんの家はかなり古く、小さな庭から入り玄関を開けると、中は暗くて狭い。 窓ガラスの割れた箇所に、子供用パズルの台だった厚紙をガムテープで貼って、穴を塞いでいた。 Aさんの治療費などで家計は火の車だったのだろう。 とても貧乏だった。  Aさんのお母さんはいつも、 「ごめんね~お菓子とかないけど…。」 と言い、冷たい麦茶などを出してくれた。 僕はお菓子が欲しいから来ている訳ではなく、Aさんに会いたいから来ているだけだった。 お腹が空いたら、学校から持って帰ったAさんの給食のパンを、Aさんの弟と分けて食べた。  Aさんの弟は幼稚園児。 普通なら僕と一緒で、ヤンチャ盛りな年頃なのだろうが、とても静かな子で、何故かいつもお腹を空かせていた。 重い病を患った姉を持つ環境に育って、色んな気苦労があったのだろうか。普通の子供よりも大人だった。 僕の方が、彼よりも遥かに子供だったと思う。
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