初恋の思い出

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 もっとAさんの笑顔が見たい。 そう思った僕はある日、クラスの友達3~4人を誘って、Aさんの家に行った。 少しでも大人数の方が、Aさんもきっと喜ぶと思っていた。  まるで我が家に友達を連れて来たかのように皆を呼び上げ、いつもの場所である縁側の隅に座り、友達とAさんの弟と遊び始めた。 いつになく賑やかで、Aさんの弟も楽しそうだ。 しかしAさんは、なかなか奥の部屋から姿を見せなかった。 奥でお母さんに急かされて、やっと出て来たAさんは、深々とニット帽をかぶり、困惑の表情を浮かべていた。 Aさんの姿を見て、連れて来た友達も全員、困惑した。 それもそのはず、Aさんは普通の子より顔も青白く、何より頭に短いうぶ毛しか生えていない。 僕は毎日見てるから気付かなかった。というより、全く気にもしていなかったのだが、やはり他の友達は、突然Aさんの変わり果てた姿を見て、ビックリしたのだと思う。 Aさんも、そんな姿を皆に見られたくなかったのだろう。 変な空気になって、もう帰ろう、という事になった。  帰り道、歩きながら僕は、とても後悔し、自分を責めた。
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